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地名一覧

弁慶 べんけい Benkei

北海道後志地方寿都町

アイヌ語表記: Penke-ruPenike-ruPerke-iPen-ikkew

弁慶岬は江戸中期の記録ですでに「弁慶岬」と呼ばれ、和名は寿都湾の義経弁慶伝説を負っている。弁慶が岬の先端で来ない船軍を待ち続けたという話である。旧図のアイヌ語形は「ヘニケウ」「ベニケウ」「ヘニツケウ」となっている。

位置

42.8229, 140.1880 · 座標:OpenStreetMap Nominatim, 2026-09-10。弁慶岬 の位置。 OpenStreetMap で開く

指示対象

  • 弁慶岬。寿都の西端の大岬で、国道229号が回り込む。

語源分析

perke-i

ペㇾケイ ‘破れたる処’ 提案
  • perke ‘破れる・割れる’
  • i ‘…する処’

提唱者: 永田方正 (Nagata Hōsei)

あちこちの解説は「ペル・ケイ」と書くが、永田の切り方は perke-i である。岬一帯には岩が裂けたところがたくさんあり、その点では一理ある。

反論

  • 「ペレケイ」が「ヘニケウ」になるかというとどうだろう。 — zenibako_trek zenibako_trek…
確信度: 低

perke は辞書にある語で、裂けた岩も実在するが、記録された表記の「ニ」の音に届かない。

zenibako_trek… 表「弁慶岬の既存の地名解」田村1996 perke ペㇾケ【自動】破れる、割れる

pen-ikkew

ペニッケウ ‘獣の背首’ 提案
  • pen ‘上の方’
  • ikkew ‘腰・背骨’

提唱者: 上原熊次郎 (Uehara Kumajirō)

音としてはぴったり合う。

反論

  • 地名としての類例がない。地名が出来た後から、たまたま音が似ている別の単語になぞらえられたというパターンに見える。いわゆる地名説話タイプの作り話である。 — zenibako_trek zenibako_trek…
確信度: 低

両要素とも辞書にある語で表記への当てはまりも近いが、ここで岬を身体部位で呼ぶ根拠がなく、類例も示されていない。

zenibako_trek… 表「弁慶岬の既存の地名解」田村1996 ikkew イッケウ【名】腰、背骨にそったウエストの下

penke-ru

ペンケル ‘上手の道’ 提案
  • penke ‘上手の’
  • ru ‘道’

提唱者: 間宮林蔵 (Mamiya Rinzō)

間宮林蔵は岬を「ヘンケル」と記し、上手の道と読む。著者はこの読みを採り、その道を特定する。フヱヲマイのマド岩を過ぎた石政泊の途中で岩に大きな切れ目があってそれ以上浜を進めなくなり、丘に取り付いて上を行くことになる。武四郎の廻浦日記もその通りに登っており、伊能大図には反対側に ru-san ルーサン〈道が下る〉が見え、文化年間の『西蝦夷地行程』にもマツナトマリからサメトマリまでの山道が記されている。今日の国道229号が通っている道がその penke-ru である。

異形

  • penike-ru ‘上手の道’ 著者は、penke も penike もどちらも辞書にあり、同じ意味であると述べる。

根拠

  • 同型地名

    同じ地名が余市の海岸に見え、伊能大図は現在の登地区に「ヘンゲルー」と書く。豊富町の海岸線にも見える。間宮林蔵もそれと同一だろうと考えたのだろう。

    • ヘンゲルー penke-ru
      • penke ‘上手の’
      • ru ‘道’
  • 文献

    遠山景晋も武四郎の50年前に「へにける」と記し、「弁慶」を後の表記としており、この読みを裏付ける証言が二つ独立に存在する。

  • 地形

    実際に歩いてみると、マド岩を過ぎた石政泊の途中で岩に大きな切れ目がありそれ以上進めなくなり、そこから丘に取り付いて国道まで戻ることになった。地名の指す経路はこれである。

確信度: 中

penke も ru も提案どおりの意味で辞書にある語で、複合の形も普通であり、江戸期の二人の観察者が独立に「ヘンケル」「へにける」と記録している。道そのものの特定は著者によるもので、地図と実地の歩行から論じられている。

zenibako_trek… 表「弁慶岬の既存の地名解」および『窮髪紀譚』田村1996 penke ペンケ【位名】(地理的に)上、川上(の所)

Penge-not

‘上手の岬’ 提案
  • Penge ‘上手の’
  • not ‘あご・岬’

提唱者: John Batchelor

penge は川や山、海岸の「下手」に対する「上手」を意味する。not はあごで、鈍い岬に用いられる。下手にあたる語は pange。

確信度: 低

1905年刊行のバチェラーの辞典に印刷された読みと語義。分節はバチェラー自身のもので、その要素のいくつかは辞書の見出し語に対応しない。

Batchelor1905 § V "Place Names Considered", s.v. Benkei saki

用例

  • ヘニケウ 地図 Edo period

    松浦山川図・伊能大図(ヘニケウ岬)・泰蝦夷島図がこの形。間宮河川図は「ベニケウ」、天保里数図は「ヘニツケウ岬」、今井測量原図は「ベニケフトマリ」。和名の「弁慶岬」と書く地図も多い。純粋な和名なら音がこのようにぶれるとは考えにくい。

    zenibako_trek… 表「旧図に見られる弁慶岬のアイヌ語形」
  • ベニツケウ 文献 Edo period 西蝦夷日誌
    従是大岩壁なる故、九折を上り平野に出、爰をベニツケウ[弁慶岬](大岬)と云。

    松浦武四郎はフヱヲマイの岩穴を過ぎたあたりで九十九折を丘の上に登り、そこから岬に出ている。

    zenibako_trek…
  • へにける 文献 Edo period 未曾有後記
    「べんけい」には非あらず、「へにける」也と云。転訛して「べんけい」と呼しより、判官のことは一般の口実なれば、やがて弁慶の字を用るなるべし。

    遠山景晋は松浦武四郎の50年ほど前にこの地を訪れ、名を「へにける」と聞いており、「弁慶」の字は義経伝説に引かれた後の当て字と見ている。

    zenibako_trek…
  • ヘンケル 文献 Edo period 窮髪紀譚
    弁慶岬は蝦夷言葉でヘンケル
    zenibako_trek…

関連地名

  • フヱヲマイ ふえおまい 岬のすぐ西の岩穴。浜の道が終わり、登りが始まる地点。 zenibako_trek…
  • ルーサン るーさん ru-san〈道が下る〉。伊能大図にフヱヲマイの反対側に見える。 zenibako_trek…
  • ヌカモリ ぬかもり 弁慶の土俵跡の近くの小山。松浦武四郎の朱太川渡し場からのスケッチに描かれ、凝灰岩が露出しているという。名は「糠盛り」から来た和名かと思われるが、not-ka-mori〈岬上の小山〉と解することもできるかもしれない。 zenibako_trek…

出典

zenibako_trek… 田村1996 Batchelor1905