美国 びくに Bikuni
北海道後志地方積丹町美国
アイヌ語表記: Pikuni・Piuni
ビクニ場所とシャコタン場所は別々の管轄であり、ここで扱われるのは前者の海岸である。美国地区には現在、積丹町役場が置かれている。
位置
43.2983, 140.5989 · 座標:OpenStreetMap Nominatim, 2026-09-10。美国 の位置。 OpenStreetMap で開く
指示対象
- 川 美国川。まわりは砂浜で、河口のところだけ少し粒の大きい小石が溜まっている。
- 集落 積丹町役場のある美国地区、および旧ビクニ場所。シャコタン場所とは別々の管轄で、シャコタン運上屋は日司地区にあった。
語源分析
pi-un-i
ピウニ ‘小石のある処’ 定説提唱者: 定説
松浦が書き取った「小石のある処」という語義に対応する読み。『永田地名解』は美国郡がまるごとすっぽり飛ばされており、郡名の「ビクニ」以外は触れられていないため、この海岸には定説のないものが多い。
反論
- どの史料も k を持つ「ビクニ」と書く。稀に誰かが訛って聞き取ることくらいはあるだろうが、10人中10人がビクニと聞いたのだから、ピウニがピクニになったとは考えにくい。 — zenibako_trek zenibako_trek…
pi「小石」は田村の見出し語で、un-i の形も普通である。記録された全表記の k が説明されない。
pik-un-i
ピクニ ‘砂利石のある処’ 提案- pik ‘小石・砂利石’
- un ‘ある’
- i ‘処’
提唱者: zenibako_trek(小樽銭函地名歴史研究会) (zenibako_trek (Otaru Zenibako Place-Name and History Society))
pik という単語はどのアイヌ語辞典にも載っていない。記事の典拠は文化年間の単語帳『イロハ番付 阿異野事葉』の「ざり石を/ピクン」である。語義は松浦が聞き取った「小石が有ること」とも一致し、美国川の河口には今も粒の大きい小石が溜まっている。昔は橋などなかったから、この石を踏み越えて川を渡ったのだろう。
この読みは記録された全表記と河口の地形に合う。第一要素の根拠は一つの手製の単語帳のみで、辞典には現れない。記事は積丹周辺の方言かもしれないとする。
pok-un-i
ポクニ ‘陰のある処’ 提案提唱者: 諸説
記事が「ビクニ」の k を説明しようとして提示されてきた試案として、提唱者を示さずに伝えるものの一つ。
記事はこれらの試案を、あり得なくはないが納得させるだけの説得力はないとする。
pikew-un-i
ピケウニ ‘小粒の石のある処’ 提案- pikew ‘小粒の石’
- un ‘ある’
- i ‘処’
提唱者: 諸説
記事が「ビクニ」の k を説明しようとして提示されてきた試案として、提唱者を示さずに伝えるものの一つ。
記事はこれらの試案を、あり得なくはないが納得させるだけの説得力はないとする。
piwka-un-i
ピゥカウニ ‘小石原のある処’ 提案提唱者: 諸説
記事が「ビクニ」の k を説明しようとして提示されてきた試案として、提唱者を示さずに伝えるものの一つ。
記事はこれらの試案を、あり得なくはないが納得させるだけの説得力はないとする。
pikke-un-i
ピッケウニ ‘蛙のいる処’ 提案- pikke ‘蛙’
- un ‘いる’
- i ‘処’
提唱者: 諸説
記事が「ビクニ」の k を説明しようとして提示されてきた試案として、提唱者を示さずに伝えるものの一つ。
記事はこれらの試案を、あり得なくはないが納得させるだけの説得力はないとする。
用例
- ビクニ/ヒクニ 文献 Edo period 旧図類
旧図類では一貫して「ビクニ」もしくは「ヒクニ」。アイヌ語地名でここまでブレがないのは珍しく、どの史料も k の音を持つ。
zenibako_trek… - ビクニ 文献 Edo period 竹四郎廻浦日記(松浦武四郎)
ヒクニは川の名にして、小石の有ることを以て号しもの也。此運上屋の有る地は本名ヲタネコロなるべし。ヲタは砂の夷言也。依て其地砂浜なり。
松浦の聞き取りでは、ビクニは「小石のある処」の意味で美国川を表す。運上屋があったところは美国川東岸の海水浴場のあるところで、ヲタネコロ、ota-nikor「砂に囲まれた処」くらいの意味という。
zenibako_trek… - ピクン 辞典 Bunka era イロハ番付 阿異野事葉
ざり石を/ピクン
ヨイチ運上屋請負人・林長左衛門が文化年間にイロハ順にアイヌ語単語をまとめさせた手製の単語帳。記事は pik「小石/砂利石」を積丹周辺の方言で、道東方面ではあまり聞かれないものかもしれないとする。
zenibako_trek… - pi 辞典 1996
【名】[概](所は piye(he) ピイェ(ヘ)) 小石、(果物など)の種。
沙流方言辞典に pik という見出し語はない。
田村1996 s.v. pi - ヲタネコロ 文献 Edo period 竹四郎廻浦日記(松浦武四郎)
ビクニ運上屋のあった美国川東岸の土地の名。
zenibako_trek…
関連地名
- 小泊(ポントマリ) こどまり — pon-tomari「小さな泊」を和訳した字名。美国川の東側。 zenibako_trek…
- 茶津(チャツナイ) ちゃつ — チャシナイ chasi-nay「砦の沢」から来た字名。黄金岬の西側。記事は地名の「シ」が「ツ」によく化けること、ツ(tsu) という音がアイヌ語に存在しないことを付す。黄金岬のほうはチャシコツで、岬の上は見晴らしが良い。 zenibako_trek…
- 滝の下(チャラツナイ) たきのした — チャラツナイ charse-nay「滑り滝」から。茶津の向こう側にある崖下の浜。武四郎曰く高さ3丈幅3尺くらいの滝である。 zenibako_trek…
- 婦美(フミ) ふみ — フンベマイ humpe-oma-i「クジラのいる所」から音を切り出した字名。このあたりにクジラが漂着したとも、浜婦美から見たマッカ岬がクジラの姿に似ているからともいう。フンベマイがもともと示す位置は、座標としてはマッカ岬の先端になっている。 zenibako_trek…
- 幌武意(ホロムイ) ほろむい — poro-moy「大きな湾」。背後の崖からの道しかない、現役の漁港がある小さな集落。 zenibako_trek…
- レブンコトマリ(浜婦美) はまふみ — 浜婦美の江戸時代の呼称。弘化3年にも2、3軒のニ八小屋があり、松浦は「尤も陸道なし」と書いている。全盛期には60戸と小学校の分校があった集落で、昭和40年の廃校の後に廃村となった。 zenibako_trek…
- イタギリイシ(板切石) いたぎりいし — 旧図に「エタランケウシ」とあり、etu-ranke-us-i「鼻が下方についている所」と読む。かつて集落があったところで、岬の先端に「ポンマカシュマ」という大岩がくっついている。 zenibako_trek…
- カヤノカ かやのか — kaya-notka-oma-i で〈帆の形をしたもの〉の意味。 zenibako_trek…
- ラモン泊 らもんとまり — rawne-tomari「深い泊」の訛。崎の手前はすこし窪地になっている。 zenibako_trek…
- オロウェン泊 おろうぇんとまり — oro-wen-tomari「中が悪い泊」。船着が悪かったのだろうかと記事は述べる。 zenibako_trek…
- タシコロヲルエトマリ たしころ — 旧図に「タシコロヲルエトマリ」とあり、taskor-or-un-tomari「寒波の所にある泊」。taskor は「冬のひどい寒さ」。 zenibako_trek…
- ノッケウアンナイ のっけう — notkew-un-nay「顎にある沢」。 zenibako_trek…
- ヘモイ泊 へもいとまり — 松浦山川図に「セモエウントマリ」とあり、hemoy-un-tomari「鱒のいる泊」。ビヤノ岬の向こう側の浜で、「ヘモイシマ」「フレシマ」と呼ばれる細長い立岩が2つ並んでいる。 zenibako_trek…