北海道石狩地方札幌市手稲区および後志地方小樽市星野町
星置
ほしおき Hoshioki提出された読みはいずれも、集落がその下にあったものを滝と見るか崖と見るかで分かれる。松浦武四郎の伝える本名「ソウシホキ」=「滝二ツ有」と、昭和3年の村図に書かれた「ホシボッケ」が、この判断に最も直接かかわる記録である。
アイヌ語表記: Soushipokke・So-us-pok-ke
語源分析
so-pok
ソーポク
滝の下
- so 滝
- pok の下
提唱者: 永田方正 (Nagata Hōsei)
星置川の河川標識は「崖の下」説とともにこの読みを併記する。著者は、明治期にこれをまとめた永田方正が『再篙石狩日誌』を読んでいないはずであり、松浦の「ソウシホキ」との一致は別ルートの聞き取りによると述べる。
pesh-poki
ペシポキ
崖のその下
- pesh 崖
- poki その下
提唱者: 山田秀三 (Yamada Hidezō)
星置川の河川標識は「滝の下」説とともにこの読みを併記する。沙流方言辞典の pes は砂浜より上の山になっている所(段丘)の斜面。
pes-pok-i
ペシポキ
崖の下のもの
- pes 崖
- pok 下
- i もの・処
提唱者: 榊原正文
同じ崖の読みに形式名詞を加えた形。
反論
- 形式名詞の i〈処〉は基本的に動詞の後ろにつき、名詞にはつかないという制約がある。pok〈下〉は名詞なので pok-i〈下の処〉とすることはできない。pok-ke〈下の処〉なら文法的にも問題がない。 — zenibako_trek zenibako_trek2022
pon-so-poki
ポショポキ
小さい滝の下
提唱者: 浜田隆史
滝の読みに pon〈小さい〉を冠した形。
ooho-suwoppo-kes
ホォソォポケ
深い箱の麓端
提唱者: 『銭函郷土史 第一巻』
so-us-pok-ke
ソウシポッケ
滝の下の処
提唱者: zenibako_trek(小樽銭函地名歴史研究会) (zenibako_trek (Otaru Zenibako Place-Name and History Society))
松浦の「ソウシホキ」に基づく。松浦は「ホキは並ぶ」としたが、この読みでは so が「滝」、us が「群在する」、pok が「下」、ke が「処」にあたる。著者は以前この形を so-us-pok-i と書いていたが、形式名詞 i は動詞につき pok は名詞であるため末尾を ke に改めた。昭和初期まで見える「ホシボッケ」がこの末尾音節を伝えており、「ホシオキ」はその言い慣らされた形である。
根拠
- 文献
昭和3年の『銭函村土地連絡図』は同じ場所に「字星置」と並べて「字ホシホッケ」「字ホシボーケ」と書いており、末尾の ke が地元に残っていたことがわかる。
- 地形
星置川の上流には星置の滝と乙女の滝の二つがある。もう一つの金山の滝は近年発見されたもので松浦の言う二つには含まれないだろう。いずれにせよ us〈群在する〉は複数の滝の存在を示す。
- 文献
永田方正の so-pok は別ルートの聞き取りからほぼ同じ読みに達している。
用例
- ホシホキ/ソウシホキ 文献 Edo period 巳手控
ホシホキはヲタルナイに落る也。本名ソウシホキと云り。滝二ツ有と云義。
松浦武四郎は本名を「ソウシホキ」とし、その意味を「滝二ツ有」とする。
- ホシホキ/ソウシホキ 文献 Edo period 再篙石狩日誌
ホシホキと云よし。この川をもて領境とするよし。水末はヲタルナイ川に落るとかや。本名ソウシホキのよし。ソウは滝の事、ホキは並ぶと云事。此水源に小滝二ツ有と。
松浦は「ソウは滝の事、ホキは並ぶと云事」と訳し、水源に小滝が二つあると記す。
- ホシボッケ/ホシホッケ/ホシボーケ 地図 1928 銭函村土地連絡図
昭和3年の『銭函村土地連絡図』は現在の星野町付近に「字星置」「字ホシホッケ」「字ホシボーケ」を併用している。
- タキ 地図 1873 札幌郡西部図
明治6年の地図は「ヲタルナイ川」すなわち現在の星置川に小さく「タキ」と書いており、開拓初期からこの滝の存在が知られていたことがわかる。
関連地名
- 星野 ほしの — 旧星置集落の小樽側。昭和18年まで「銭函星置」と呼ばれ、隣の星置と区別するために「星」の語幹を残して改称された。後半の由来ははっきりしない。同じ年に和右尻が春香に、十万坪が桂岡に、山ノ上が見晴に改められている。 zenibako_trek2022
- 星観 ほしみ — 星置川の札幌側にあるJRの駅名と緑地名。近くの「星観橋」に由来する。この名の住所は存在せず、駅名はひらがなで書かれる。 zenibako_trek2022
- 稲穂 いなほ — 星置の東側地区。稲作が成功したことに由来する。 zenibako_trek2022
出典
- 星野・ほしみ・星置の地名の由来
zenibako_trek·2022-11-20
- アイヌ語沙流方言辞典
田村, すず子·1996