支笏 しこつ Shikotsu
北海道石狩地方支笏湖・千歳市
アイヌ語表記: Sikot・Sikkot
定説と著者の読みは子音1つと、名が最初に何を指したか(千歳周辺の低地帯か、山中の支笏湖か)で分かれる。第二要素を kot「窪み」と読む点は共通する。江戸期の話者は名をシコツ山に結び付けており、見通しの記録からこれは風不死岳と定まる。
位置
42.7539, 141.3275 · 座標:OpenStreetMap Nominatim, 2026-09-10。支笏湖 の位置。 OpenStreetMap で開く
指示対象
- 湖 支笏湖。江戸期の記録では「シコツ沼」
- 川 シコツ川(現・千歳川)。名を負っていた区間は支笏湖から長都沼までで、そこにシコツ太(シコツ川の河口)があった。現在の千歳川は下流の江別川と上流の美笛川を含む
- 集落 千歳一帯。箱館奉行羽太正養がシコツは「死骨」を連想させて縁起が悪いとして千歳と改めさせ、元の名は山奥の湖に残った。シコツアイヌは沙流勢力のシュムクルに属し、千歳・恵庭・北広島・江別あたりをイウォロとしていた
- 山 シコツ山。著者は樽前山の隣の風不死岳(1102m)と同定する
語源分析
si-kot
シコッ ‘大きな窪み’ 定説- si ‘大きな’
- kot ‘窪み・谷’
提唱者: 山田秀三 (Yamada Hidezō)
山田秀三は『北海道の川の名』で、千歳市街地から上のあたりは千歳川を挟んだ大きな窪地形で、英語でいえば valley をつくっており、漁の盛んな有名な場所だったので Shi-kot(大谷間)と呼ばれ、川の名としても土地の名としても使われたのであろうとする。『北海道駅名の起源』も同じ読みを採り、札幌・苫小牧間の低地帯を全体的にさしていったものとする。この低地帯にはかつて浅くて大きな長都沼・馬追沼があり、現在の空港のある分水嶺も標高25mほどしかない。
反論
- 古老は「シコツ」のシにアクセントを置いて発音しており、si-kot であれば「コ」の方にアクセントが来るはずである。si は true や main に近い意味を持つ語で、「大きな」という訳とは合わない。江戸期にシコツアイヌから聞き取った由来も命名の順序が逆で、山と沼が先で地名が後になる。 — zenibako_trek zenibako_trek…
kot「くぼみ」は使われた意味のまま辞書にある語で、石狩低地帯の地形にも合う。疑問はアクセントと第一要素にある。
sik-kot
シコッ ‘水に満ちた窪地’ 提案- sik ‘水に満ちた’
- kot ‘窪み・谷’
提唱者: zenibako_trek(小樽銭函地名歴史研究会) (zenibako_trek (Otaru Zenibako Place-Name and History Society))
地名が表しているのは支笏湖だとする読み。kot は谷や窪地を表す語で、沼や湖をそう呼んでいる例はあまりないため、sik「水に満ちた」を補う。古老の先頭にアクセントを置く発音とも合う。
異形
- sik-kot-toho ‘水に満ちた窪みの湖’ — 「シコツトホ」という表記に合わせた湖の形。toho は to「湖」の所属形で、to にしても差し支えない。
根拠
- 形態パターン
古老は「シ」の部分にアクセントを置いて発音していた。記事は、このシコツのアクセントの違いが田村辞典でも指摘されているとする。
- 文献
遠山金四郎(1807)、玉虫左太夫(1857)、松浦武四郎(1846)はいずれもシコツ山から流れ来るからシコツ川というと記録し、松浦はさらにシコツ沼を挙げる。小糸井・敷生・漁太・長沼・当別太・ホン勇振川からの見通しの記録と、樽前山の峰がシコツ山に続くという記録から、シコツ山は支笏湖に大きくせり出す風不死岳と定まる。
両要素とも使われた意味のまま辞書にある語で、報告されたアクセントとも、沼を先に置く江戸期の記録とも合う。si に対する sik の根拠はアクセントの報告であり、両者は発音上ほとんど変わらないとされて表記では分かれない。
Shikot-to
‘イグサの湖’ 提案- Shik ‘イグサ’
- ot ‘複数標識’
- to ‘湖’
提唱者: John Batchelor
ot は shik「イグサ」が複数であることを示す。
1905年刊行のバチェラーの辞典に印刷された読みと語義。分節はバチェラー自身のもので、その要素のいくつかは辞書の見出し語に対応しない。
用例
- しこつ山 / しこつ川 文献 1807 未曾有後記(遠山金四郎)
(長都)沼を越て浅狭の清川に入り、千歳川に出つ。しこつ山より出る水にて、しこつ川といひしを、公領になりて千歳川と唱へ、山をも、ちとせ山と呼也。
zenibako_trek… - シコツ山 文献 1857 入北記(玉虫左太夫)
千歳: シコツ山より出る古シコツ河なり。
zenibako_trek… - シコツ山 / シコツ沼 文献 1846 蝦夷日誌(松浦武四郎)
チトセ 本名シコツ 此川上にシコツ山と云山有。又麓にシコツ沼と云沼有より流れ来るが故に、此処をシコツと云いし也
江戸期に現地のシコツアイヌから聞き取った由来は定説と順序が逆で、シコツ山・シコツ沼から流れ来るからこの地をシコツと呼ぶという。
zenibako_trek…
関連地名
- シコテㇺコ・エアン・パラト — 山田秀三が伝える湖の呼び方。著者は sik-kot-emko-e-an-para-to「シコツ川中流にある広い沼」と読むが、emko は「中程」の意味なので水源にある支笏湖がこれなのかはよくわからないとし、支笏湖上流の美笛川もシコツ川と見られていた可能性を挙げる。 zenibako_trek…
- オコタンペ — 支笏湖の北西に残る地名。o-kotan-un-pe「河口に古潭がある所」と読み、著者はかつてのシコツコタンを旧オコタン野営場のあたりと見る。 zenibako_trek…
- 江別 えべつ — 著者は千歳あたりの ipe-ot-i「鮭のたくさんいる所」に由来を求め、地名が現在は江別川と石狩川の合流点の江別太に移っている点を、サッポロ川と同様の河口への移動と見る。 zenibako_trek…