樽岸 たるぎし Tarugishi
北海道後志地方寿都町
アイヌ語表記: Taor-ikir-us-i・Taor-kes
名は町名とバス停名として残り、これが付いていた川のほうは名を失っている。
位置
42.7667, 140.2486 · 座標:OpenStreetMap Nominatim, 2026-09-10。樽岸 の位置。 OpenStreetMap で開く
地名表での読み: タオロシケ Taor-kes
指示対象
- 集落 寿都湾の底の地区。かつて寿都郡樽岸村。今も町名とバス停名として残る。
- 川 旧図の「タライキリシナイ」。現在は樽岸川という地名はなく、伊能図と今井図の座標を重ねると現在の「番屋ノ沢」に相当する。バス停「建岩」のあるあたり。
語源分析
terke-us-i
テㇾケウシ ‘飛び跳ねる所’ 提案提唱者: zenibako_trek(小樽銭函地名歴史研究会) (zenibako_trek (Otaru Zenibako Place-Name and History Society))
「タルキシ」という音と、このあたりに拡がる磯から思いついた解。磯岩を飛び跳ねて越えるような場所によくつく地名である。ただしエ音からア音への転訛は滅多に起きないとして、著者はこれを退ける。
三要素とも普通の語だが、母音の点を理由に提唱者自身がこの読みを取り下げている。
taor-kes
タㇻケㇱ ‘川岸の高所の端’ 定説- taor ‘川岸の高所’
- kes ‘端’
提唱者: 定説 (the received reading)
音として樽岸になり、地形的特性にも合っており、著者も違和感のない地名解と認める。
反論
- 旧図の表記は「タラエキクシナイ」「タラエキリシナイ」「タリキシナイ」「タライキリシ」「タラキルシ」で、いずれも taor と末尾の要素の間に taor-kes では説明のつかない音節を含む。 — zenibako_trek zenibako_trek…
kes はこの意味で辞書にある語だが、taor はここで参照した辞書には載らない。古い表記には、この読みが取りこぼす音節がある。
taor-ikir-us-i
タリキルシ ‘高岸が並ぶ所’ 提案提唱者: zenibako_trek(小樽銭函地名歴史研究会) (zenibako_trek (Otaru Zenibako Place-Name and History Society))
松浦山川図の「クシ」を「リシ」の誤字、今井図の「ヱ」を「イ」と読むと「タリキルシ」が現れ、これが樽岸の原名である。ここは海沿いまで高岸が迫っており、波風が強いときはこの高岸の上を歩いたのだろう。幕末に山道が整備されたらしく、樽岸神社の参道がわずかにその痕跡を残す。神社より奥は道がなくなり、鹿の獣道になっている。
根拠
- 文献
五つの旧表記は「タラ」と語尾の間に音節を持つ点で一致しており、それを埋めるのが ikir である。
- 地形
この区間は高岸が海際まで迫り、列をなして続いている。
ikir・us・名詞化要素は辞書にある語だが、taor はここで参照した辞書に載らず、読みは一つの地図の「ク」を「リ」と読むことを必要とする。
用例
- タラエキクシナイ 地図 Edo period 東西蝦夷山川地理取調図
著者は「クシ」を「リシ」の誤字と見る。
zenibako_trek… 表「古地図・旧記/樽岸(タルキシ)」 - タラエキリシナイ 地図 Edo period 今井測量原図
今井図は「イ」を「ヱ」と書く癖があるので、元の発音は「タライ」だろう。
zenibako_trek… 表「古地図・旧記/樽岸(タルキシ)」 - タライキリシ 地図 Edo period 伊能大図zenibako_trek… 表「古地図・旧記/樽岸(タルキシ)」
- タリキシナイ 地図 Edo period 天保里数図zenibako_trek… 表「古地図・旧記/樽岸(タルキシ)」
- タラキルシ 地図 Edo period 秦蝦夷島図zenibako_trek… 表「古地図・旧記/樽岸(タルキシ)」
関連地名
- 建岩 たていわ — 樽岸と六条の間のバス停と海岸集落。アイヌ語地名は ri-suma〈高い岩〉とされる。浜からそれらしき岩は見当たらないが、地元の漁師によると樽岸漁港の堤防にある岩がもとの建岩で、今は削られて高さがなくなったという。絵葉書にはトンネルの向こう、崎の先端に岩が写っている。建岩トンネルは最近まで現役だったが、いつの間にかオープンカットされて現存しない。 zenibako_trek…